メンズエステにおけるグルーミング

グルーミング(grooming)という言葉は近年「(動物同士で行われる)毛繕い」というよく知られた意味から転じて、かなり否定的なニュアンスを持つ用語として定着しつつある。例えば英語圏で使われる「child grooming」という表現や、日本語における「性的グルーミング」という表現はどちらも同じような意味である。大人による若年層とりわけ未成年との性的目的を達成するための、様々な準備行動のことを指す。

準備行動の一環としてわかりやすいのは、食事や物品の提供行為であろう。あるいはそういう具体的な物品でなくても、悩みを聞くことで承認欲求を満たすような行為もそれにあたるのではないか。ここ数年で色々と話題になっている「トー横」界隈にも、未成年を食い物にする大人の存在がちらほら確認されている。彼らは一見優しい態度で近づいてくるが、それは秘めた性的欲求を満たすための作戦でしかなかったり。

さてメンズエステに話を移して、メンエスにおいてもグルーミング的なものは存在する。ただセラピストは一部10代を除けば成年なので意味合いは変わってくるが、根底にあるものほぼ同じであろう。とりわけ業界未経験で20代前半くらいの比較的若いセラピストの場合、この手の罠に嵌るケースは珍しくない。例えばプレゼントを持ってくる客はよくいるが、それに対しどんな感情を持ち合わせているかでわかることも。

業界に不慣れなセラピストや自分に自信がないセラピスト、男に優しくされた経験に乏しいセラピストは粋に感じてしまい必要以上に施術をがんばってしまうことがある。さすがにフェラやチンチン挿入までのケースは珍しいにしても、手コキやマッサージと称して身体を触ることは通りやすくなる。そこでセラピストをイカせて満足させることができるかは客の腕次第だが、もしそうなれば手懐けるのは時間の問題かと。

もちろん贈り物を気持ち悪いと思うセラピストは珍しくなく、本音の部分としてプレゼントよりもお金が嬉しいはず。ただSNSにアップするネタにはなるし、プレゼントがもらえるくらいの人気者であるという印象操作のネタにはなる。小慣れたセラピストはその点においてのみ利用するいうこともある。ただし若くて交際経験が豊富なセラピストでも、彼氏が同世代ばかりだと狙い目はあるしそもそも盛っている可能性も。

今日はお客さんが来てくれるだろうか、という不安と闘いながら勤務しているのがセラピストの実態なのだ。それはどんなに魅力的なセラピストであっても同じである。運とがんばりによっては高給を望むことができ、それまでの日常生活のままなら買えなかった服や行けなかった飲食店や旅行が実現できるメンズエステ。オフのSNS発信だけなら輝いているように見えるだろうが、華々しいイメージと程遠い実態である。

また労働基準法の適用外なので最低賃金という言葉とも縁がない。実態は雇用契約に近い働き方をさせられるのだろうが、多くのお店が業務委託契約という形を取っているはずである。これはそうすることで最低賃金を支払わなければいけない問題を回避し、万が一過激行為が事件になった場合にお店との契約(≒指示)でそうしたのではない。あくまでセラピストが勝手にやったことという形を取るための仕組みなのだ。

そういう法的知識に疎いセラピストも多く、半分騙して働かせているような側面がメンズエステ店にはある。お茶の場合に最低保障給を設けているお店もあるが、大半は勤務時間や日数など複雑な支給条件があり多くは適用されない。さらに交通費もほとんどのお店で支給されない。地元を避ける傾向にあるため交通費をかけて勤務することが多く、無駄な出費を抑えペットボトル1本でやり過ごしていることもよくある話。

せっかくプレゼントをわざわざ買って持っていくのであれば、そういうセラピストの姿を見越した粋な贈り物を選んだ方が効果的である。別に高いものだからいいというわけでもないのだ。ただセラピストを喜ばせたいという考えはあってもゴールはそこではなく、客としてはその分過激に頼むよというメッセージの代弁である。結局は安い場合は安く済ませたいだけだし、高い場合は高いなりの期待の表れでしかないが。

望みが実現された場合、もはやそれはメンズエステではない。ただ世の中にはそういう遊びを楽しんでいる客もいる。相手するセラピスト側は優しくされていると思っているかも知れないが、冷静に考えたらなし崩し的に身体を弄ばれているだけでそのことに気づいていないこともある。まあ両者がちゃんと楽しんでいて、セラピストにそれなりのメリットが生じている限りトラブルになるリスクは低いと思われますがね。

金銭等のやりとりでその僥倖が実現している限り、売春防止法に該当するかも知れませんが相手が成年なら行為自体が罪になることはない。ただ常に気をつけなくてはならないのは、不同意性交罪の構成要件に抵触する可能性がある点かと。金銭等のやりとりでお互いに合意があったとしても、何かのきっかけで相手側が「無理やりだった」と言い出すと話は変わってくる。さんざん貰うだけ貰って楽しんでおいてそれか。

酷い話のように聞こえるでしょうが、可能性としてはあり得ることです。他のセラピストに浮気した腹いせにということもあるかも。あるいはわざと過激行為を容認しておいて後日脅迫して示談金や口止め料せしめるお店が出てきてもおかしくない。この手の世界はセラピストもお店側も究極的には信用してはならないし、信用に足るな存在ではないことも理解しておく必要があるのでは。筋の通った遊びではないのでね。

グルーミングもほどほどに、ということなのかと。

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