
・第3章(第2章はこちら)
そもそもなぜメンエスに戻ってきたのか。キャバクラ出身者の身の上話なんてものは、ほぼ作り話なのは有名なことである。どこまで真実かわからないが、以前のお店のことやそこを辞めた後の話も話してくれた。ただまあ何とも言えない気持ちにはなった。
自称トップセラピストではあったようだが、その地位を得るに至ったきっかけは店舗経営者への性接待だったようである。何となく予想していたことであるが、どうやらあのお店は面接だか講習だかを通じてセラピスト候補の女の子にチンチン入れてた模様。
彼女もその被害者らしい。入店したきっかけが地元の先輩の紹介だったようで、顔を潰すようなことができないので嫌々受け入れたとか。でもたぶんそれって、その先輩による性上納システムの一環だったのではないだろうか? それにより先輩も得してない?
たぶんその先輩も、そうすることで何かしら優遇を経営者から手に入れていたはずである。彼女はそのネタに使われたのだろう。真相は何であれ、性暴力という実態の講習を受け入れた女の子は勤務数が増える。そして拒否した女の子は干されて辞めていく。
人気の理由は彼女自身の魅力や努力もあったのだろうが、スタート時点でそういうことを強要された結果なのである。クソ店だろうと思ってはいたが予想通りだった。言い方はよくないが経営者だけが独占して楽しんでおきながら、客には一切楽しませない。
最終的にはセラピストたちが一斉に離反し、経営ができなくなって件のお店は潰れたのだとか。でもあの組織は店名を変え場所を変え、今でも別の場所でメンエス経営している。直接的な証拠はないのだけど、その末裔と思われるお店はいくつか存在してる。
自称トップセラピストとして活躍した後は、一時的にデリヘルの世界にも身を投じた模様。ただ派遣された部屋で監禁されかけたことで、これは無理だなと思って即退店。その後どういうご縁があったのかはわからんが、結果的に子どもを出産したのだとか。
普通に考えれば結婚したということになるのだが、結婚生活の話が何も出なかったのでシングルまたは未婚の可能性も高い。あるいは旦那がいるが稼がないということもあり得るか。出産間もない状況でメンエスやらなきゃいけない状況とはどういうことか。
やたらと経産婦だからということを理由に鼠径部施術を拒む。子どもが生まれたのでもう危ういことはできないだの、もっと若かったら積極的にできただの。論理的に全く納得いかない理由ばかりを並べては安全運転に終始する。本当に元トップセラピスト?
しかもいずれキャバクラの世界に返り咲こうとしている。出産の話すら本当かどうか疑わしい。夜の世界で何とかすることしか頭にない。それも大きな選択肢の1つであることは理解できるが、あくまで選択肢の1つであり絶対的な答えであるなんてことはない。
夜職に染まってしまうことの恐ろしさがここにあるような気がする。メンエスのセラピストとして一時の栄華を極めたが、その末路としては寂しいものがあった。
(おしまい)
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